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フリーランス・業務委託新法対応の実務チェックリスト:企業法務が押さえるべき契約整備と社内周知

2026/07/26

法改正対応

フリーランス・業務委託新法対応の実務チェックリスト:企業法務が押さえるべき契約整備と社内周知

フリーランス・業務委託新法とは何か

2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆる「フリーランス新法」は、企業がフリーランスや個人事業主に業務を委託する際のルールを大きく変えるものです。従来の下請代金支払遅延等防止法(下請法)は資本金要件によって適用対象が限定されていましたが、フリーランス新法は資本金要件を設けず、フリーランスに業務を委託するほぼすべての企業を対象としている点が最大の特徴です。

そのため、これまで下請法の適用対象外だった中堅・大企業であっても、フリーランスへの業務委託を行っている限り、新法の規律を受けることになります。施行から一定期間が経過した今、法務部としては自社の委託取引の実態をあらためて棚卸しし、新法の適用範囲に入る取引がどれだけあるかを正確に把握しておくことが重要です。特に事業部門ごとに発注が分散している企業では、法務部が把握していない取引が存在するケースも少なくありません。

新法が企業に課す主な義務

フリーランス新法は、委託事業者に対して主に以下の義務を課しています。法務部としては、これらを社内規程や契約書ひな形にどう落とし込むかを具体的に検討する必要があります。

  • 書面等による取引条件の明示義務:業務内容、報酬額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示すること
  • 報酬支払期日の設定・遵守義務:給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定し、これを遵守すること
  • 禁止行為の遵守:受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、不当な給付内容の変更・やり直しなど、下請法と類似した禁止行為が定められていること
  • 募集情報の的確な表示義務:広告等でフリーランスの募集情報を提供する際に、虚偽または誤解を招く表示をしないこと
  • ハラスメント対策・相談体制の整備義務:フリーランスに対するハラスメントを防止するための体制を整えること
  • 中途解除等の予告義務:継続的業務委託を解除する場合、原則として30日前までに予告すること

これらの義務は、社内の発注担当者が個別の裁量で判断して運用できるものではなく、契約書のひな形や発注プロセス自体にあらかじめ組み込んでおく必要があります。

契約書・発注書の見直しポイント

新法対応の実務でまず着手すべきは、フリーランスとの契約書・発注書のひな形見直しです。具体的には次の点を確認していきます。

  • 取引条件明示書に必要な記載事項(給付内容、報酬額、支払期日、契約期間など)が漏れなく盛り込まれているか
  • 電磁的方法(メールやチャットツールなど)で明示する場合の記録保存の仕組みが整っているか
  • 報酬の支払期日が「給付受領日から60日以内」の要件を満たしており、社内の支払サイクルと整合しているか
  • 継続的業務委託の中途解除・不更新の際の予告条項が、新法の要件(原則30日前予告)を満たしているか
  • 禁止行為に該当しうる条項(一方的な報酬減額規定や、買いたたきにつながる過度な値引き交渉条項)が残っていないか

取引条件明示書のチェックリスト化

担当者が迷わず対応できるよう、明示すべき事項をチェックリスト化し、発注システムや契約書テンプレートにあらかじめ組み込んでおくことが有効です。属人的な運用に頼ってしまうと、新法違反のリスクが個別の発注担当者任せになり、法務部が把握できないまま問題が拡大するおそれがあります。

契約書の見直しは一度作成すれば終わりというものではありません。社内の複数部門(購買・人事・各事業部)が個別にフリーランスへ発注しているケースでは、ひな形が乱立し、法務部の目が届きにくくなりがちです。既存契約書の一括点検や新ひな形への切替には相応の工数がかかるため、法務アウトソーシングについてはこちらのようなリソースを活用し、計画的に進める企業も増えています。

社内体制整備:関係部門との連携と周知

フリーランス新法対応は、法務部だけで完結する話ではありません。実際にフリーランスへ発注する購買部門、人事部門、各事業部の担当者が正しく運用できるようにするための社内周知と教育が不可欠です。

  • 発注担当者向けの新法対応マニュアル・研修の実施
  • 発注申請フローへのチェック項目の組み込み(法務部による事前確認プロセスの設計)
  • 既存の継続的業務委託契約の棚卸しと、新法基準に沿った再締結・条項追加
  • ハラスメント相談を含む相談窓口の設置と周知

特に拠点や事業部が多い中堅・大企業では、発注慣行が部門ごとに異なることが多く、法務部が主導して統一ルールを浸透させる必要があります。社内体制の再設計や運用ルールの標準化を自社だけで進めることに不安がある場合は、外部の専門家の知見を借りながら進める方法も選択肢の一つです。法務部コンサルティングの詳細はこちらから、体制構築の進め方について相談することもできます。

違反した場合のリスクと是正対応

フリーランス新法に違反した場合、公正取引委員会や厚生労働省による報告徴収、助言・指導、勧告、さらには勧告に従わない場合の企業名公表といった行政措置の対象となり得ます。直接的な行政措置だけでなく、レピュテーションリスクや取引先・求職者からの信頼低下も無視できないポイントです。

是正対応としては、以下のようなステップが考えられます。

  • 指摘を受けた取引の実態調査と原因分析
  • 契約書・運用フローの是正計画の策定と実行
  • 再発防止のための社内研修の実施
  • 必要に応じた外部専門家(弁護士・法務コンサルタント)への相談

行政からの指摘を受けてから慌てて対応するのではなく、施行から時間が経った今だからこそ、自社の運用状況を能動的に点検しておくことが望ましいといえます。

まとめ:法務部門がとるべきアクション

フリーランス新法対応は、単なる法令遵守にとどまらず、企業とフリーランスとの適正な取引関係を築くための重要な取り組みです。法務部としては、以下の3点を優先的に進めることをおすすめします。

  • 自社のフリーランス取引の実態を棚卸しし、適用対象取引を正確に特定する
  • 契約書・発注書のひな形と社内運用フローを新法基準に合わせて見直す
  • 関係部門への周知・教育を継続的に行い、属人的な運用を防ぐ

これらの対応には一定のリソースが必要となるため、社内のマンパワーだけで完結させることが難しい場合は、外部の専門知見を柔軟に取り入れることも有効な選択肢です。自社の状況に合わせた最適な体制づくりを、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。