2026/05/11
法務部構築企業規模が拡大し、事業の多角化や海外展開が進むにつれて、法務部門の組織設計は経営上の重要課題となります。規模が小さい段階では「法務担当者が数名いれば十分」という発想で対応できていても、事業規模や複雑性が増してくると、既存の組織構造では対応しきれない場面が増えてきます。
特に中堅・大企業においては、法務部の組織設計が以下のような形で企業全体の競争力に直結します。
本記事では、法務部組織設計の二大モデルである「機能別組織」と「事業部別組織」について、それぞれの特徴と実務上の運用実態を解説したうえで、自社に適した組織形態を選択するための判断軸をご提供します。
機能別組織とは、法務部の業務を「契約審査」「訴訟対応」「コンプライアンス」「知的財産」「M&A」といった業務機能の専門分野ごとにチームや担当者を分ける組織形態です。法務部長を頂点として、その下に各専門チームが並列に存在する、いわゆる「専門特化型」の組織です。
機能別組織の最大のメリットは、専門性の集積と深化にあります。同じ分野の案件を継続的に担当することで、担当者は当該分野における深い知見と実務経験を蓄積することができます。例えば、M&A専門チームであれば、デューデリジェンスから契約交渉、クロージング後の統合作業まで、一気通貫して関与することで、実務ノウハウが組織内に蓄積されます。
一方で、機能別組織には縦割りになりやすいというデメリットがあります。各チームが専門性を深めるあまり、隣接する業務分野への視野が狭まりがちです。また、各事業部門からの要請に対して「どのチームに相談すればよいかわからない」という問題も生じます。
事業部別組織(ビジネスユニット型)とは、法務担当者を各事業部門や地域ごとに配置し、それぞれの事業に密着した法務サポートを提供する形態です。各事業部門に「担当法務」が存在し、その事業に関わる幅広い法的事項を一手に担います。
事業部別組織の最大の強みは、事業部門との一体感と迅速なレスポンスにあります。法務担当者が特定の事業に深く関与することで、ビジネスの文脈を理解したうえでの法務サポートが可能になります。
一方で、事業部別組織では各担当者の専門性が分散しやすく、高度な専門案件への対応力が低下するリスクがあります。また、全社的なリスク管理の統一性を保つことが難しくなる場合もあります。
実際の中堅・大企業における法務部の多くは、機能別組織と事業部別組織を組み合わせたハイブリッド型を採用しています。このモデルでは、法務部の中核にはコンプライアンス・訴訟対応・知的財産などの専門チームを置きつつ、各事業部門には「ビジネス法務担当」を配置するという構造をとります。
ハイブリッド型を機能させるためには、以下の点を明確に設計することが重要です。
どの組織モデルが自社に適しているかを判断するには、以下の軸から自社の状況を分析することをおすすめします。
取り扱う事業領域が多岐にわたり、各事業の法務ニーズが大きく異なる場合は、事業部別(またはハイブリッド型)が有効です。逆に、事業の種類が限られており法務案件の類型も比較的均一であれば、機能別組織で十分対応できます。
法務部員が10名以下の規模では、機能別に細かく分けること自体が難しく、少人数でオールラウンドに対応する体制が現実的です。一方、20名以上の規模であれば、専門チームを設けつつ事業部担当を配置するハイブリッド型が機能しやすくなります。
事業部門の担当者が法務に相談することに慣れておらず、日常的な法務関与が進んでいない場合は、事業部別に法務担当者を配置して「顔の見える法務」を実現することが先決です。法務リテラシーが高く、案件が自動的に法務に持ち込まれる文化がある企業では、機能別でも十分に機能します。
グローバル展開や高度に規制された業種(金融・医療・製造など)においては、コンプライアンスや専門規制対応に特化したチームを設ける機能別の強みが発揮されます。国内中心で規制対応が比較的シンプルな事業では、事業理解を重視した事業部別が適している場合があります。
M&Aや新規事業開発を積極的に進めていく場合は、専門チームを中核に置く機能別・ハイブリッド型が対応力を発揮します。オーガニック成長が中心で既存事業の深化が主戦略であれば、事業部に密着したサポート体制を優先するほうが効果的です。
どの組織モデルを選択したとしても、法務部が本来の機能を果たすためには、設計だけでなく運用面での継続的な工夫が欠かせません。
事業環境や企業規模は常に変化します。年に一度は組織設計の妥当性を見直し、必要に応じて担当領域や人員配置を変更する仕組みを設けることをおすすめします。
法務部の組織設計において、「すべてを内製化する」という発想は必ずしも最適ではありません。高度な専門性が求められる案件(大型M&A、国際仲裁、特許訴訟など)は外部弁護士に委託し、日常的な契約審査や社内相談対応は内製で対応するという役割分担を設計することが、コスト効率と品質の両立につながります。
また、法務人材の確保が難しい局面では、法務業務のアウトソーシングや外部法務人材の活用も有効な選択肢です。LeONEが提供する「法務部業務アウトソーシング」や「法務人材コネクト」などのサービスを活用することで、内製組織を補完しながら、法務機能全体の水準を高めることができます。
組織の形態にかかわらず、法務部内でのナレッジ共有と業務標準化は、組織力を底上げする重要な取り組みです。契約書の雛形整備、審査基準の明文化、過去案件のデータベース化などを通じて、属人化を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを安定させることが可能です。
最も優れた組織設計であっても、法務部が社内で「相談しにくい部署」と思われていては機能しません。法務部のプレゼンスを高め、事業部門が積極的に相談できる環境を作ることも、組織設計と並行して取り組むべき重要な課題です。定期的な勉強会の開催、法務通信やニュースレターの発行、事業部門との合同会議への参加など、様々な接点を通じて法務への敷居を下げる取り組みが有効です。
中堅・大企業における法務部の組織設計は、機能別・事業部別・ハイブリッド型という大きく三つの選択肢があり、それぞれに固有のメリットとデメリットがあります。重要なのは、自社の事業構造、法務人員規模、事業部門の法務リテラシー、将来の成長戦略などを総合的に勘案したうえで、自社に最適なモデルを選択・設計することです。
また、組織設計はあくまで「器」に過ぎません。その器を機能させるためには、外部リソースの戦略的活用、ナレッジ管理の仕組み、事業部門との関係構築といった運用面の施策を並行して進めることが不可欠です。
LeONEでは、法務部の組織設計・構築支援から、日常的な業務アウトソーシング、法務人材の採用・紹介まで、中堅・大企業の法務部門が直面する課題に幅広く対応するサービスを提供しています。法務部の在り方を見直したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。