2026/07/05
法務部構築契約書の数が増えるにつれて、「どこに何の契約書があるか分からない」「更新期限を見落としてしまった」「担当者が退職して契約内容が引き継がれていない」といった悩みを抱える法務部は少なくありません。こうした課題を放置すると、更新漏れによる契約失効や、条項確認の遅れによる交渉機会の損失など、事業に直接影響するリスクにつながります。本記事では、契約書管理体制を構築するための考え方と、CLM(Contract Lifecycle Management:契約ライフサイクル管理)システム導入の実務ポイントを、中堅・大企業の法務部担当者の皆様に向けて解説いたします。
契約書管理体制の整備が急務となっている背景には、いくつかの要因があります。第一に、契約件数そのものの増加です。取引先の多様化やサブスクリプション型のサービス契約の増加により、法務部が把握すべき契約数は年々増えています。第二に、コンプライアンス要請の高まりです。取引先とのリスク分担や契約条件を正確に把握できていない状態は、内部統制上も問題視されやすくなっています。第三に、テレワークの定着により、紙媒体での契約書保管では検索性・アクセス性に限界が生じている点も挙げられます。
こうした状況の中で、契約書を単に「保管する」だけでなく、締結前の申請・審査から締結後の管理・更新・終了までを一気通貫で管理する体制、すなわちCLMの考え方が重要になっています。
多くの法務部では、契約書管理に関して次のような課題を抱えています。
これらの課題は個別に対処するのではなく、契約のライフサイクル全体を俯瞰した体制設計によって解消することが望ましいといえます。自社だけでこうした体制設計を進めるのが難しい場合は、外部の専門家の知見を借りることも有効な選択肢です。法務部コンサルティングの詳細はこちらから、体制構築の進め方についてご相談いただけます。
CLMシステムとは、契約書の作成・審査・締結・保管・更新・終了までの一連のプロセスをシステム上で一元管理する仕組みです。主な機能には以下のようなものがあります。
近年ではAIを活用した契約書レビュー支援機能を備えるCLM製品も増えており、条項の抜け漏れチェックや標準条項との差分検出といった業務効率化にもつながります。ただし、AI機能はあくまで補助的なものであり、最終的な法的判断は法務担当者が行う必要がある点には留意が必要です。
CLM導入を成功させるためには、以下のようなステップで進めることが重要です。
まずは自社の契約書がどこに何件存在し、どのようなプロセスで管理されているかを棚卸しします。そのうえで、システムに求める要件(審査ワークフローの複雑さ、他システムとの連携要否、多言語対応の必要性など)を明確にします。
製品選定にあたっては、以下の観点を比較検討することをおすすめします。
いきなり全社展開するのではなく、特定の契約類型や部門に限定してパイロット導入を行い、運用上の課題を洗い出したうえで本格展開に移行する方法が現実的です。
CLM導入において実務上もっとも負荷が高い工程が、既存契約書のデータ移行です。過去の契約書をスキャン・アップロードし、契約相手方や期間などのメタデータを入力する作業は、件数が多いほど大きな工数を要します。この工程を法務部の既存メンバーだけで対応しようとすると、通常業務を圧迫し、導入プロジェクト自体が停滞してしまうケースも少なくありません。
そのため、データ移行やメタデータ入力といった定型的な作業については、期間を区切って外部の実務支援を活用することも有効な手段です。法務アウトソーシングについてはこちらから、契約書管理業務の支援内容をご確認いただけます。
また、システムを導入しただけでは体制構築は完了しません。以下の点を意識して社内定着を図ることが重要です。
契約書管理体制の構築は、単なるシステム導入にとどまらず、法務部の業務プロセス全体を見直す機会でもあります。属人化や散在といった課題を解消し、契約情報を組織の資産として活用できる体制を整えることで、法務部はリスク管理部門としてだけでなく、事業判断を支える戦略部門としての役割を強化することができます。
体制構築を推進するための専門人材の確保にお悩みの場合は、法務人材コネクトの詳細はこちらから、必要なスキルを持つ人材とのマッチングについてご相談いただけます。自社のリソースと外部の専門知見を適切に組み合わせながら、着実な体制構築を進めていただければと思います。
関連コラム
法律事務所LeONEのコラムも見る →