2026/04/20
法務キャリア「働き方改革」という言葉が叫ばれて久しく、多くの企業が残業削減やリモートワーク推進に取り組んでいます。しかし、法務部門においては、他部署と比較して働き方改革の進捗が遅れているケースが少なくありません。案件の機密性、書類の管理、弁護士との連携など、法務固有の業務特性がその背景にあります。
実際、法務担当者からは「残業が常態化している」「テレワークを活用したいが業務の性質上難しい」「ワークライフバランスをとりたいが、緊急案件が次々と発生する」といった声が後を絶ちません。法務部門の働き方改革は、担当者個人のモチベーションや健康管理にとどまらず、企業のリスク管理能力や優秀な法務人材の確保・定着という経営課題に直結します。
本稿では、法務部門特有の課題を踏まえながら、リモートワークの実態とワークライフバランス実現に向けた具体的な取り組みをご紹介します。法務部長・法務マネージャーとして部門を率いる方、あるいは法務スタッフとして自らの働き方を改善したいとお考えの方にとって、参考になる内容をお届けします。
多くの企業でリモートワークが標準化されつつある中、法務部門では依然として出社が求められる場面が多く残っています。その主な理由として、以下の3点が挙げられます。
法務業務では、契約書の原本管理や秘密保持が必要な情報を日常的に取り扱います。印鑑を押す機会が多い日本企業では、押印のために出社が必要になるケースが依然として存在します。また、クラウドへのアップロードが許可されていない機密書類を自宅に持ち出すことへの懸念も、リモートワーク普及の妨げになっています。
法務部門は、営業・購買・人事・経営企画など社内の多くの部門と連携し、スピーディーな意思決定をサポートする役割を担います。複雑な案件については、対面での議論や即座の確認が効果的なため、「やはり出社した方が早い」という判断になりがちです。経営層への報告や交渉場面では特にその傾向が強くなります。
法曹界や法務コミュニティには、「対面主義」「書面主義」という文化的な背景があります。弁護士事務所や官公庁との打ち合わせにも対面が求められるケースが多く、こうした外部との慣習が社内のリモートワーク推進を難しくする一因となっています。また、法務担当者自身が「重要な仕事は出社してこそ」という意識を持っていることも、変化を遅らせる要因です。
とはいえ、これらの障壁を乗り越えて、効果的なリモートワーク体制を整えている法務部門も増えています。成功している組織に共通する取り組みをご紹介します。
リモートワークの最大の障壁の一つが「押印のための出社」です。電子契約サービス(クラウドサイン、DocuSign等)を導入することで、物理的な押印作業をなくし、契約締結プロセス全体をデジタル化することができます。現在、多くの取引先が電子契約に対応しつつあり、導入のハードルは年々下がっています。電子署名の法的効力についても、電子署名法に基づき担保されており、安心して活用できる環境が整っています。
契約書をクラウド上で一元管理するシステムを導入することで、必要な書類にどこからでもアクセスできる環境を構築できます。契約書管理システムには、検索機能・期限管理・承認ワークフローが備わっており、テレワーク中でも業務継続性を確保することができます。導入に際しては、情報セキュリティの観点から適切なアクセス制御と監査ログの設定が必須です。
SlackやMicrosoft Teamsといったビジネスチャットツールを活用し、部門内外のコミュニケーションをデジタル化することが重要です。ただし、ツールを導入するだけでは不十分で、「どのような案件はチャットで、どのような案件はビデオ会議で対応するか」などの活用ルールを明確にしておくことが、業務の質と効率を両立させるポイントです。
「完全リモート」か「毎日出社」かの二択ではなく、業務の性質に応じてオフィスとテレワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が法務部門に適した形態です。例えば、「月・水・金は出社、火・木はリモート」というルールを設けたり、「経営会議や重要な交渉がある日は出社」という柔軟な運用を取り入れたりすることで、業務継続性と柔軟性を両立できます。
リモートワークの推進と並行して、法務担当者のワークライフバランスを実現するためには、業務そのものの効率化が欠かせません。以下に、法務部門で実践できる効率化の手法をご紹介します。
法務部門が多くの時間を費やす業務の一つが契約書レビューです。業種・取引類型ごとのひな形を整備し、チェックリストを活用することで、レビューにかかる時間を大幅に短縮できます。標準化されたひな形があれば、経験が浅い担当者でも品質を保ちながら業務をこなせるため、部門全体の生産性向上にもつながります。
近年、契約書の自動レビューや条項のリスク分析を行うAIツールが急速に普及しています。LegalForce(現Legatech)やGVA assist等のツールは、契約書レビューのスピードを大幅に向上させるとともに、見落としリスクを低減します。ただし、AIツールはあくまで補助手段であり、最終的な法的判断は人間が行う必要があります。ツールの特性と限界を正しく理解したうえで活用することが大切です。
法務部門への社内依頼が口頭やメールで無秩序に来る状況は、担当者の業務負担を増大させます。専用の依頼フォームや案件管理ツールを整備することで、依頼の見える化と優先度管理が可能になります。「いつ、誰が、何を依頼しているか」を一元管理することで、突発的な対応に追われる状況を減らし、計画的な業務遂行が実現します。
法務部門の業務をすべて内製しようとすると、担当者への負荷が集中し、残業が常態化してしまいます。定型的な契約書の作成・レビューや、英文契約の翻訳・確認といった業務は、外部の法務アウトソーシングサービスを活用することで、コア業務に集中できる環境を整えることができます。LeONEの「法務部業務アウトソーシング」サービスも、こうした業務分担の最適化を支援するものです。
働き方改革は、法務部門内部の効率化にとどまらず、人材の採用・定着という観点からも非常に重要なテーマです。
転職市場における法務人材の需要は高く、優秀な法務担当者は複数の企業からオファーを受けることも珍しくありません。そうした中、候補者が企業を選ぶ際の重要な判断基準の一つが「働きやすさ」です。テレワーク制度の有無、残業時間の実態、育児・介護との両立支援など、ワークライフバランスに関わる条件は、採用の可否を左右するほどの影響力を持っています。
法務部門には女性担当者が多く、産休・育休からの復職後も活躍できる環境整備が求められています。時短勤務やリモートワークの活用により、出産・育児というライフイベントを経てもキャリアを継続できる職場環境を整えることは、貴重な法務人材の流出を防ぐうえで極めて重要です。
「残業が多い」「柔軟な働き方ができない」という理由で法務部門を離れる若手担当者も少なくありません。若い世代ほど、仕事とプライベートの両立を重視する傾向があります。働き方改革によって業務効率が上がり、残業が減れば、若手のモチベーション維持と定着率向上につながります。
近年、副業・複業を通じて法務スキルを提供するフリーランスの法務人材が増えています。こうした人材との協働を可能にするためにも、リモートワーク環境の整備が不可欠です。LeONEの「法務人材コネクト」サービスでは、こうした柔軟な人材活用のニーズにも対応しており、必要なタイミングで必要なスキルを持つ人材を確保することができます。
法務部門の働き方改革を進めるうえで、組織単独での取り組みには限界があります。業務の棚卸し、ツールの選定・導入、人材体制の見直しなど、多岐にわたる課題に対して、外部の専門知識やリソースを活用することが効果的です。
法務部門の働き方改革は、担当者個人の幸福度向上にとどまらず、部門全体の生産性・リスク管理能力の強化、そして企業の競争力向上につながる重要な経営課題です。自社の法務部門の現状を見直し、まずは取り組みやすい一歩から始めてみてはいかがでしょうか。LeONEは、皆様の法務部門の課題解決と持続的な発展を全力でサポートします。