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フリーランス・業務委託新法が企業法務に与える影響と対応策

2026/04/27

企業法務

フリーランス・業務委託新法が企業法務に与える影響と対応策

フリーランス新法とは何か:制定の背景と目的

2024年11月1日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)が施行されました。この法律は、フリーランスや業務委託で働く人々が増加する中、従来の法規制では保護しきれなかった取引上の不公正を是正するために制定されたものです。

近年、日本ではフリーランスとして働く人口が急増しています。内閣官房の調査によれば、フリーランスの人口は300万人を超えているとされており、デジタル化の進展やコロナ禍を契機とした働き方改革によってその数は今後も増加傾向にあります。一方で、発注企業との取引において、報酬の不払い・減額、不当な返品、一方的な契約変更といった問題も数多く報告されており、これらに対する法的な保護が求められてきました。

フリーランス新法は、このような状況を踏まえて、業務委託を発注する企業(発注事業者)に対して、書面等による取引条件の明示義務、報酬の支払期日の設定義務、禁止行為の規定、育児介護等への配慮義務など、具体的な義務を課するものです。企業の法務部門にとって、この新法への対応は急務となっています。

新法が適用される取引の範囲と「特定受託事業者」の定義

フリーランス新法の適用対象を正確に理解することは、法務対応の第一歩です。法律上の「特定受託事業者」とは、従業員を使用していない個人事業主または一人会社(法人であって代表者以外に役員がなく、かつ従業員を使用しないもの)を指します。

つまり、いわゆる「一人法人」も対象となる点には特に注意が必要です。フリーランスだからといって個人事業主のみを想定していると、法人格を持つ小規模な外部委託先を見落とすリスクがあります。

発注事業者の区分と義務の違い

新法では、発注事業者を「業務委託事業者」と「特定業務委託事業者」の2種類に分けており、それぞれに課される義務の内容が異なります。

  • 業務委託事業者:従業員を1人以上使用する法人または個人事業主(すべての発注企業が該当)。書面等による取引条件の明示義務が課されます。
  • 特定業務委託事業者:従業員を常時2人以上使用する法人または個人事業主。上記に加えて、報酬支払い期日の設定・支払い義務、禁止行為の規定、育児介護等への配慮義務、ハラスメント対策に係る体制整備義務、中途解除等の事前予告義務が適用されます。

ほとんどの中堅・大企業は「特定業務委託事業者」に該当するため、より広範な義務への対応が求められます。

企業法務が押さえるべき主要な義務と禁止行為

フリーランス新法が定める主要な義務と禁止行為について、法務担当者が実務上特に注意すべき点を解説します。

書面等による取引条件の明示義務

業務委託を行う際は、業務の内容、報酬の額、支払い期日、業務委託期間などの取引条件を、書面または電磁的方法(メール・電子契約等)により明示しなければなりません。口頭のみでの発注は違法となります。この要件は、すべての業務委託事業者(従業員1名以上)に適用されます。

実務上は、発注書や業務委託契約書を必ず作成・交付する体制を整えることが不可欠です。特に、これまで口頭・メールのみで発注していた慣行がある場合は、早急に書類作成フローを整備する必要があります。

報酬支払い期日の設定と60日ルール

特定業務委託事業者は、給付を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払わなければなりません。下請法における支払い期日ルールと同様の趣旨ですが、フリーランス新法は下請法の適用対象外となる取引にも及ぶため、注意が必要です。

禁止行為

特定業務委託事業者が行ってはならない禁止行為として、以下が定められています。

  • 受領拒否:正当な理由なく、給付の受領を拒否すること
  • 報酬の減額:正当な理由なく、報酬を減額すること
  • 返品:正当な理由なく、給付に係る物品を返品すること
  • 買いたたき:通常相場に比べて著しく低い報酬を不当に定めること
  • 購入・利用強制:特定の物品・役務を強制的に購入・利用させること
  • 不当な経済上の利益の提供要請:金銭や労務等を不当に要求すること
  • 不当な給付内容の変更・やり直し要求:費用負担なく不当な変更・やり直しを求めること

これらの行為は、下請法の禁止行為と類似していますが、フリーランス新法は下請法よりも広い範囲の取引に適用される点が特徴です。

育児介護等への配慮義務とハラスメント対策

特定業務委託事業者には、妊娠・出産・育児・介護に関してフリーランス側から申し出があった場合に、必要な配慮を行う義務も課されます。また、フリーランスに対するハラスメント(セクハラ・パワハラ等)を防止するための体制整備も義務付けられています。これらは従来の労働法制には存在しなかった規定であり、法務部として社内周知・体制整備が必要です。

既存の法規制との関係整理:下請法・労働法との違いを理解する

フリーランス新法への対応を考える上で、既存の法規制との関係を正確に整理することが重要です。

下請法との関係

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、一定規模以上の親事業者から中小企業・小規模事業者への発注(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)を対象とし、資本金規模の要件があります。一方、フリーランス新法は資本金規模に関係なく、「特定受託事業者(一人事業者)」への発注全般に適用されます。したがって、下請法が適用される取引であっても、相手方が「特定受託事業者」に該当すればフリーランス新法も適用されます。また、下請法の適用外となる取引(資本金要件を満たさない等)であっても、フリーランス新法は適用されます。両法の適用関係を整理し、重複する義務や固有の義務を明確にすることが法務の重要な役割です。

労働法との関係

フリーランスは原則として労働者ではなく、労働基準法や労働契約法の適用外です。しかし、実態として「使用従属性」が認められる場合は、労働者として扱われるリスク(「偽装フリーランス」問題)があります。フリーランス新法は、このような「偽装フリーランス」の問題には直接対処していませんが、取引の適正化を図ることで実質的な保護を強化するものです。法務部としては、フリーランス新法対応と同時に、委託先の労働者性判断も適切に行い、偽装フリーランスのリスクを回避する体制を整えることが求められます。

法務部が主導すべき社内対応の実務ステップ

フリーランス新法への対応は、法務部が中心となって全社的に推進する必要があります。以下に、実務上の対応ステップを示します。

ステップ1:委託先の実態調査と適用対象の洗い出し

まず、自社が業務委託している外部の個人事業主や一人法人の実態を把握します。発注部門(人事・IT・マーケティング・開発等)ごとに委託先リストを整備し、フリーランス新法の対象となる「特定受託事業者」を特定してください。この調査は、総務・人事・調達部門と連携して行うことが効果的です。

ステップ2:契約書・発注書の整備

書面明示義務を満たす契約書・発注書の雛形を整備します。既存の雛形がある場合は、法定の必須記載事項(業務内容、報酬額、支払期日、委託期間等)が漏れなく記載されているか確認し、不足があれば改訂してください。また、電子契約への対応も検討し、迅速かつ確実に書面交付ができる仕組みを整えます。

ステップ3:発注・支払いフローの見直し

報酬支払い期日の「60日ルール」を遵守するため、発注から支払いまでのフローを見直します。特に、検収プロセスや経理部門との連携フローを整備し、遅延なく支払いが完了する体制を構築してください。

ステップ4:禁止行為の社内周知と研修

フリーランスとの取引に関わる全部門(調達・営業・開発・マーケティング等)に対して、禁止行為の内容と具体的な対応方法を周知徹底します。特に、現場担当者が「正当な理由」に該当するかどうかを判断できるよう、具体的な事例を用いた研修を実施することが重要です。

ステップ5:ハラスメント防止体制の整備

フリーランスに対するハラスメント防止のための規程・窓口を整備します。既存の社内ハラスメント防止体制をフリーランス等の外部委託先にも適用できるよう拡張するか、新たな窓口・仕組みを設けることを検討してください。

ステップ6:中途解除時の予告ルールの整備

継続的な業務委託契約を中途解除する場合、原則として30日前までに予告する義務があります。突発的な解除が必要になった場合の対応方針や、予告期間中のフォローアップ体制についても社内ルールを整備しておくことが重要です。

LeONEのサービスを活用したフリーランス新法対応の強化

フリーランス新法への対応は、法律の理解から社内体制整備、契約書の改訂、研修実施まで多岐にわたります。特に法務部のリソースが限られている企業や、これから法務体制を強化していこうとしている企業にとって、外部の専門家を活用することが効率的かつ確実な対応につながります。

法務部業務アウトソーシングによる迅速な対応

LeONEの「法務部業務アウトソーシング」サービスでは、フリーランス新法対応に必要な契約書雛形の整備、発注書フォームの作成、禁止行為チェックリストの作成、社内規程の改訂など、実務レベルでの対応を一括してサポートします。自社法務部の負担を最小限に抑えながら、迅速かつ正確な法令対応を実現できます。

法務部コンサルティングによる戦略的な体制構築

「法務部コンサルティング」サービスでは、フリーランス新法への対応を含む法務リスク管理体制の構築を包括的に支援します。新法への個別対応にとどまらず、下請法・労働法など関連法規との整合性を踏まえた体系的な対応策の設計が可能です。

法務人材の補強による対応力強化

社内での対応推進に法務人材が不足している場合は、LeONEの「法務人材コネクト」や「法務人材募集」サービスを通じて、即戦力となる法務担当者の採用・アサインをご支援します。フリーランス新法のような新たな法規制への対応は、法務人材のスキルと経験が直接成果に影響するため、適切な人材確保が重要です。

まとめ:法務部が先手を打つフリーランス新法対応

フリーランス新法は、2024年11月の施行から既に半年以上が経過していますが、対応状況は企業によって大きな差があります。法務部が積極的に社内をリードし、発注部門と連携した実効的な対応体制を構築することが急務です。

対応の遅れは、公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁による指導・勧告・公表のリスクを招くだけでなく、委託先フリーランスとのトラブルや訴訟リスクにもつながります。また、フリーランスとの適正な取引関係を構築することは、優秀な外部人材の確保・維持という観点からも企業価値向上に直結します。

法務部としては、まず自社の対応状況を正確に把握した上で、優先度の高い課題から段階的に対応を進めることが重要です。必要に応じて外部専門家のサポートを活用し、法令遵守と企業競争力の両立を目指してください。LeONEでは、フリーランス新法対応を含む企業法務全般のご支援を行っております。対応に不安を感じている法務担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。